「ポリコレ」とは結局何を意味してる言葉なのか:かみーゆ的メモ

ポリティカル・コレクトネスという単語を「ポリコレ」と略して使っている方を結構見かけるのですが、そもそもこの言葉がどこから出てきたもなのかよくわかってなくて、ずっとその使い方に違和感があったので、ちゃんと調べてここにまとめておこうと思います。(これはただのメモと個人的見解です)。

最近でこの単語に関係したニュースはこれですね。

『リトル・マーメイド』の実写版の映画でアリエル役に黒人歌手が選ばれたことで物議をかもしたニュースです。その歌手とは、Beyonceが激押ししてる新人Chloe x HalleのHalle Baileyなのですが、なぜアリエル役が黒人なのか、ジンジャーと呼ばれる赤毛の白人をどうして起用しないのかと物議を醸していたようですが。。。

今回はそのニュースに関してどうこういうのが目的ではありません。このニュースが日本語のメディアでもいろいろ報じられたところ、ツイッター上で「またポリコレでキャスティングが・・・」とか「ポリコレ配慮で・・・」みたいなツイートを見かけたのですが、私が今まで抱いていた違和感がついに臨界点を突破しました(?)

そもそもポリコレという言葉の使い方、合ってるの????

というわけで、調べてみました!まず普通に「ポリティカル・コレクトネス」で調べれば即座に日本語のウィキペディアさんが答えを教えてくれます。


”ポリティカル・コレクトネス(英: political correctness、略称:PC、ポリコレ)とは、性別・人種・民族・宗教などに基づく差別・偏見を防ぐ目的で、政治的・社会的に公正・中立な言葉や表現を使用することを指す”。

うん、と言うことは本来political correctnessって言葉自体は「差別や偏見がある用語を使うのはやめて、正しい用語を使う」取り組みのことを指しているようです。

ウィキペディアにも色々例が示されていますが、男を指すcamera"man"と言うのはやめて"photographer"を使おうとか、日本語で言うなら「看護婦」ではなく「看護師」と言おうとかそういう言葉にまつわる考えが基本のようです。

「いや、でもツイッター見てると、そういう使い方されてないことの方が多いのでは?」と不安になったのでとりあえずもう少し調べてみることにしました。しかし、とりあえず日本語で軽く調べるだけではなぜかいい情報が見つからない。。。

というわけで、とりあえずウィキペディアの英語版を確認。

始めの概要を呼んでいると、やはり基本的な意味は日本語版に書いてあるものと同じなのですが、気になる記述がありました。「公共の場やメディアでは、一般に軽蔑的に使われており、これらの方針がやり過ぎで不当なものであることをほのめかしている」という一文があります(しかも注釈がたくさん)。これは日本における「ポリコレ」という言葉を使った多様性批判とも少なからず関連があるような気がしてきます。

あくまでもウィキペディア情報ですが、1980年代にアメリカで生まれたpolitical correctnessという言葉は、1990年代に『The New York Times』が記事中で多用したことで一般化された言葉のようです。当時から特に、保守支持者によってリベラル批判を行うために使われてきた歴史はあるようで、現在もそれは続いているようです。リベラル側からの批判としては、保守派が「ポリティカル・コレクトネス」を都合よく使うことで現状の差別の問題から目を背けようとしているということだそう。

ウィキペディアによるとそれなりに長い歴史があるようですが、私の英語力と知識が追い付かず沼にはまりそうなので一端すっ飛ばして、ここ数年の間に日本で「ポリコレ」という単語が流行り始めた理由をとりあえず知りたいと思いました。そして、ようやくこれだろうという項目を見つけました。

2016年アメリカ合衆国大統領選挙!

まさにこの言葉が日本でも使われ始めた時期と一致しているし、何か解決の糸口が見えてきそうな気がします。

「2015年から2016年の間、大統領選挙に向かう中で、共和党候補のDonald Trumpが演説の中で、"political correctness"を共通の敵として使っていた」という一文があるのが気になります。この言葉を使って、彼はBarack ObamaやHilary Clintonを批判していたようなのですが、先ほど調べたように本来のpolitical correctnessという意味に当てはまるようなことをBarack Obamaが大統領就任時期に自ら行っていたか(というか誰しもがある程度やってることだと思いますが)というと疑問です。

と、ここで普通に調べたら、日本語でもちょいちょい出てきました!(ポリコレで調べればよかったのか!)


んんん。この説明では、Donald Trumpが一体ポリティカル・コレクトネスの何を批判していたのかの根幹の部分がよくわかりませんね。

と言うわけで、『The Huffington Post』の中でEric Mink氏がDonald Trumpが"political correctness"をどのように使っていたか見解を示しているので見てみましょう。


「ポリティカル・コレクトネスとは、憲法で表現の自由が保障されている国家に存在する、賛否両論ある社会的勢力のことであり、議論する価値のある正当な問題提起をしている。そして、Trumpのしていることはそれではない。彼は権力に対して、誰も言いたがらない真実を語るような反逆者ではない。賛否両論ある根深い問題について率直な議論をするために立ち上がったりはしていない。私たちの言うことをコントロールしている、エリートたちによって手渡されたルールに逆らっているわけでもない」

わかるような、わからないような。。。多分、Donald Trumpはポリティカル・コレクトネスのせいでマイノリティに配慮して言葉を選ばなきゃいけないから、みんな本当に言いたいことが言えなくなっていると普段は主張しているんだったと思いますが、そこまでは理解できます。ただ、そこからの論理の飛躍がすごくて、国境に壁を作ったりしようと公約を掲げたりするので言葉の意味に混乱を招いてしまっている気がします。

とりあえず軽くグーグル検索するだけでもわかることは、元々の意味の"political correctness"の考え方にも問題点はあって、それはずっと指摘されてきたものであるし、きっと今も続いているのだろうということです。そして本来これはリベラルか保守か関係なく議論され続けてきたものだと思われます。

例えば、まさにマイノリティ側であるLGBTQコミュニティーが大きなテーマとなっているNetflixの最新ドラマ"Tales of the City"では、中年のゲイの男性が"tranny"というトランスジェンダーの人に対して侮辱的な意味合いを持つ単語を用いたため、同じくゲイの若者から「攻撃的な言葉だから使うべきではない」と指摘されて、言い争いになるシーンがありました。

実はこれは本当に2010年代に大きな議論を呼んだ問題の一つです。特に現在のドラァグクイーンのメインストリーム化に大きく貢献したと言えるRuPaulが"tranny"という言葉を「ドラァグ・レース」内で使ったことで批判を受けたことはすごく有名です。


話が逸れるのであまり深く突っ込みませんが、2014年当時のRuPaul的な意見では"tranny"は元々トランスジェンダーを指す言葉としては使われていなかった。そして、ずっとRuPaul自身はtrannyと自称してきたし、大好きな言葉なんだと主張しているんですね。実際に、この言葉は男性が女装をすることを意味するスラングでもあり、ドラァグクイーンであるRuPaulは本当に差別的な意図を持ってこの言葉を使っているわけではなかったのかもしれません。しかし時代が変われば、そういう言葉に対する風潮や態度と言うのは移り変わっていきます。なのでこれもポリティカル・コレクトネス的な理由で大きな批判を受けました。

ただ一方で、こういうのって批判している人たちが少数派であっても、メディアはそういう批判に注目して取り上げがちなので、そうやって事が大きくなってしまう感は否めません。実際にトランスジェンダーのうち、どれくらいの人たちがこれを問題に思っているかはわからないというのもまた事実なのです。(ただ、"tranny"に関して言えば、2017年にスタイルガイドで使用が禁止され、Facebookではヘイトスピーチと見なされるようになっているので、今使うべきではないと思います。)

そういう意味では、かなりリベラルな『The Huffington Post』も2013年に「ポリティカル・コレクトネスは行き過ぎてしまっている」という論調の寄稿をしてたりしているのも見つけました。

そして昨年末には実際に、アメリカ人の多くが「政治的に正し」くあることに疲れているという調査結果が発表され、話題になっていた気がします。


日本語記事の「ポリコレ疲れ」が果たして正しい訳なのか少し疑問なのは置いといて、実に米国民の52%がこれ以上「政治的に正しい」国にはなってほしくないと答えています。上の日本語の記事だと、支持政党による違いにフォーカスされていますが、『NPR』の記事ではグラフを引用して、様々なファクターを元に比較をしています。

https://www.npr.org/2018/12/19/677346260/warning-to-democrats-most-americans-against-u-s-getting-more-politically-correct (NPR)

これ見るとポリティカル・コレクトネスに対する賛否は支持政党だけでなく、年齢差や人種、性別も大きく関係していることが見て取れます。そしてこの記事読んでいてすごく印象的だったのが"sensitivity"という単語がめちゃくちゃ出てくるところです。なんとなく日本だと「ポリコレ」というと「多様性重視」や「マイノリティーに対する差別をなくす」みたいな”強い”イメージが先行するんですけど、ポリティカル・コレクトネスの根底にあるのは、どちらかと言えばなるべく人を傷つけないようにする「繊細さ、敏感さ」なのだと思います。そして、国民が疲れているのは、それが行き過ぎた結果「すべての問題に対して常に敏感にならなければいけない」ことなのではないかなという気がしてきます。

さて。。。調べれば調べるほど混迷を極めていくのでよくわからなくなってきましたが、日本で今使われている「ポリコレ」の意味はどうなんでしょうか。例えば、「美女と野獣」の実写版や「スパイダー・マン:ホームカミング」が公開された際にもよく目にした「ポリコレに配慮したキャスティング」的な表現っていうのは、「多様性と言う正義を振りかざして攻撃してくる人たちに配慮したキャスティング」みたいな使われ方だと思うのですが、こういう意味って本当に"political correctness"と言えるものなんでしょうか?そして一般的なアメリカ人は”そういうこと”に本当に疲れているのでしょうか?

結論からと言うと、私にはよくわかりませんでした。ただ、本来のポリティカル・コレクトネスの意味がアメリカでもここまで曖昧なものになってしまうことを思うと、何か物事を語るときに安易に「ポリコレ」を使うのって、(肯定的に使おうが否定的に使おうが)結局問題の本質から逃げてしまうことになってしまうのではないかなと思います。特に英語のニュースとかSNSでもあまり"political correctness"って言葉見かけないんですよね(特にイギリスのメディアはこの言葉を使うのを嫌がっているっぽい?)。今回のアリエルの問題についても、このバックラッシュをpolitical correctnessと結び付けているメディアはあまりない印象です。というか、これはそもそもポリティカル・コレクトネスとはまた別の問題な気がしますね。

というわけで色々調べましたが、、、ん~、個人的にはやっぱ「ポリコレ」って正確な意味がよくわからないし、使うのは避けておきたい言葉だなぁって思いました。

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